BLOG ブログ
ブログ
ブログ

健康食品のエビデンスって?〜健康食品のデータの見方②〜

健康食品のエビデンスって?〜健康食品のデータの見方②〜

こんにちは!当HPのブログ記事をワンストップで担当している品質保証部門の長谷川です!

前回は自分の年齢や性別、ライフスタイルといった属性が研究データの対象者と近いかどうかで信頼性を判断する方法を紹介しました。今回は一歩踏み込んで、機能性表示食品におけるエビデンスを研究デザインから解釈する方法を解説していきます。また、健康食品が全体的にエビデンスレベルが低い理由についても紹介するので、楽しみながら読んでいただければ幸いです。

1.エビデンスレベルとは

エビデンスレベルは、研究論文を客観的に判断した信憑性の指標で、レベル1〜6やグレードA〜Dといったように段階的に分類されます。このエビデンスレベルに大きく影響を与えるのが、後述する研究デザインです。健康食品においては、成分の機能がどれくらい確からしいかを判断する目安として活用できます。

例えば、個人の体験談と専門家の意見を並べてみると、専門家の意見の方が正しいと感じるのではないでしょうか。これは専門家の意見が過去のデータや知識に基づいていて、信憑性が高いと判断されるためです。

ただし、「エビデンスレベルの高い論文があるから効果がある」は正しい主張ですが、「エビデンスレベルが低いから正しくない」は誤りです。エビデンスレベルが低いという状態は「効果が検証されていない」だけですから、解釈を間違えないようにしたいところです。

2.健康食品のエビデンスレベル

2.健康食品のエビデンスレベル

掲載されている健康食品の研究データのエビデンスレベルと解釈の仕方について紹介していきます。なお、解釈の仕方はあくまで一例ですので、納得のできるものを取り入れていただければ大丈夫です。

2.1.個人の体験談(信頼性:低)

健康食品のホームページを見ると個人の体験談が掲載されていることがあります。この体験談はエビデンスレベルとしては一番低いものです。

体験談を投稿した方の年齢と性別までは公表されているはずですが、背景の生活習慣や健康状況などがわからないので「効果が感じられた人がいる」という事実しか参考にできません。その中には思い込みによる効果も含まれています。また、効果を感じられた人が体験談を投稿するわけですから、背後に効果を感じられなかった人がいることも頭に入れておいた方がいいですね。

解釈としては「自分と同じ性別と年代の人が効果を感じられたと言っているので、自分にも効果がある可能性は0ではない」という程度に留めておくことをおすすめしています。

2.2.専門家の意見/専門家委員会の報告(信頼性:低)

意見や報告ですから、こちらは実際に研究協力を要請して健康食品を試してもらったわけではありません。実際に検証してみたら「予想と反して効果がなかった!」ということも多く、ホームページなどに掲載されている専門家の意見を鵜呑みにすることはおすすめできません。

しかし、機能性食品や特定保健用食品を目指す健康食品メーカーにとっては有益な情報源のひとつです。栄養素や特定の成分について具体的な効果が期待できるという専門家の意見は、言い換えれば現時点では効果が証明されていないことを示しています。そのため、実際に製品を使用してもらった人を対象に研究データを集めることでエビデンスレベルの高い結果を得るられる可能性があるわけです。

利用を検討している人は「専門家が意見を述べているので、検証されていないだけで理論的には効果があっても不思議ではない」と解釈するのが適切でしょう。

2.3.ケーススタディ(信頼性:低)

ケーススタディ(事例報告)は、研究協力者1名を対象に製品や特定の栄養素を摂取する前後で比較する研究デザインです。健康食品では関係者の知人や、関係者自身が試してみることが多いですね。専門家の意見とは違って、実際に摂取してもらっているのでエビデンスレベルは一段階上がります。

しかし、効果があるという結果が偶然得られた可能性や、製品への信頼や個人差でポジティブな効果が出てしまった可能性もあります。健康食品分野ではケーススタディを何件か蓄積して、効果がありそうだと判断できれば本格的な検証に進みます。

ケーススタディを1件だけ報告している場合は「これは一番良かったデータを載せている可能性があるので、簡単には信じない方がいい」と考えるとよいでしょう。複数のケーススタディがある場合は「しっかりとデータを取ろうとしているので信頼できる企業かもしれない」と、企業に対する信頼度を少し上げるくらいでの受け止めをおすすめします。

2.4.使用前後の比較研究(信頼性:低〜中)

使用前後の比較研究は、研究協力者十数名以上の集団に製品や特製の成分を利用してもらって、その前後を比較する研究デザインです。人数が多い分、個人差の影響を小さくできるのでエビデンスレベルが1段階上がります。ただし、対照群(利用していない集団)との比較をしていないので、製品や成分に効果が確実にあるとは言い切れません。

例えば、脂肪を燃焼させる効果を立証することを目的として、適度な運動と脂肪を燃焼させる効果が期待できるサプリメントを摂取したグループを調査したとしましょう。1つのグループで検証しているので、製品の効果ではなく適度な運動のおかげでダイエットが成功した可能性も考えられます。

研究上の信頼性は低い反面、ビジネスとしては一定のエビデンスレベルがあるとされる段階です。研究データと自分の属性が一致しているのであれば、「データ通りの効果が期待できる可能性はある」と解釈できるでしょう。

近年は化学的根拠についてファクトチェックが厳しくなってきているので、さらにレベルの高い研究を実施するメーカーも増えてきています。

2.5.対照群を伴う使用前後の比較研究(信頼性:中)

先述した前後比較研究では、1つの集団を対象にしていたのに対して、こちらは製品を使用しているグループと使用していないグループに分けて調査します。これは製品や栄養素の摂取以外の条件をできる限り揃えることで、その影響を回避する研究デザインです。

先述した例を参考にすると、脂肪を燃焼させる効果を立証することを目的として、適度な運動と脂肪を燃焼させる効果が期待できるサプリメントを摂取したグループAと、適度な運動だけをしたグループBに分けます。この研究でグループBよりもグループAの方が明らかにダイエットに成功した場合、サプリメントを摂取したおかげでダイエット効果を得られた可能性が高いと言えるわけです。

ここまで検証している健康食品は少数派ですから、信頼できる企業として判断できます。製品についても「実際に効果が得られる可能性が高い」と考えて差し支えないでしょう。

3.信頼性の高い研究デザインが採用されない理由

エビデンスレベルが高い研究デザインには、特定の条件を満たすグループを数年から数十年のスパンで追跡するコホート研究や、検証したい介入以外の条件が公平になるように研究協力者の集団をランダムに振り分けるランダム化比較研究などがあります。しかし、これらの研究には莫大な費用がかかるため、大企業であっても実施するのはほぼ不可能です。

信頼度が中程度である対照群を伴う使用前後の比較研究ですら大変な労力を必要とします。研究デザインや客観的な指標の設定、先行研究の収集、論文化なども視野に入れると、さまざまなコストがかかることは想像に難くありません。

一方で、すべての栄養素についてエビデンスレベルの高い研究が行われていないかというとそうではありません。ビタミンや鉄分、カルシウムなど、古くから知られている必須栄養素についてはエビデンスレベルの高い研究が公的機関によって実施されています。これらの情報は厚生労働省eJIMで確認できるので、利用を検討している方はデータベースを探してみてください。

厚生労働省eJIM

4.新しい成分や栄養素には明確な科学的根拠がないケースも!

古くから知られている栄養素や成分は、一般的に新しく発見されたものよりも研究が進んでいます。その中には長期的な影響を観察した研究もあり、安全性や信頼性は高いと言えるでしょう。しかし、メーカー側の視点で見ると、ありふれた成分や栄養素を摂取できる製品を出したところで他の製品と差別化ができないわけです。

そこで、差別化を図る方法として新しい成分や栄養素を利用した製品開発や、スーパーフードといった広告的な取り組みがなされるわけです。新しい成分や栄養素は研究が進んでいないので、専門家に意見をもらったり、ケーススタディを集めるところから始まるので、科学的根拠がないケースも多くあります。しっかりとした企業であれば、データ収集を継続するはずなので、時間が経つにつれてエビデンスが整っていくことでしょう。

あとがき

あとがき

新しい成分や栄養素を含む健康食品は、リスクや効果など分かっていないことが多い傾向があります。栄養成分などを対象にした研究はエビデンスレベルの高いものもありますが、製品自体に効果や効能が期待できるかどうかのエビデンスは企業自身が調査するしかありません。そのため、製品のエビデンスは通常の研究論文よりも低くなってしまいます。

しかし、エビデンスを大切にしようとする企業であれば、害のある製品や効果が期待できない製品をリリースする確率は低くなります。まずは、検討している健康食品のデータをしっかりと確認していただければ幸いです。